コリアニュース №457(2012.1.31)
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ドナルド・グレッグ元駐南朝鮮米国大使:天安艦沈没事件について「トンキン湾事件を思い出す」と語る
ニューヨーク・タイムズ(2010年8月31日付)への寄稿文「北朝鮮の水流を吟味する」(”Testing North Korean Waters” :Korea File 2010 No.3に訳文) で、ロシア海軍専門家の現地調査結果を踏まえて南朝鮮当局が発表した合同調査団の「北朝鮮による魚雷攻撃」説を否定したドナルド・グレッグ元南朝鮮駐在米国大使は今年の1月9日、ニューヨークの自宅で南朝鮮のインターネット新聞「オーマイ・ニュース」の単独インタビューに応じ再び天安艦事件について語った。以下にその内容を紹介する。

  質問:あなたは天安艦沈没に関する韓国政府の発表に同意しなかった。その根拠は何なのか。

  答 :二つの側面がある。まず、この問題がこれ以上南北対話の障害にならないように取り下げた方がいいからだ。もう一つは、私はわが国が取った公式的立場に疑問を持っている。米国はすばらしい海軍を保有している。事件当時、米国海軍は韓国海軍と共同作戦中であった。北朝鮮が天安艦を沈没させたということは、北の小型潜水艇が海軍の作戦海域のど真ん中にやって来て、一発の魚雷で天安艦を沈没させたうえ誰にも知られずに脱出したこということだが、私は米国海軍はそれよりも優秀だと思っている。ロシアからの影響も受けた。

  質問:ロシアの天安艦真相調査の報告書の内容を知っているのか。

  答 :知っている。ロシア調査団は、天安艦のスクリューに巻かれた魚網の跡を発見した。そして船体の凹んだ部分も見つけた。ロシア調査団は天安艦が魚網に絡まり、魚網が艦を海底に引きずる過程でこの海域に多く設置された機雷の中で流失した一つが天安艦に接触して沈没したと考えている。ロシア調査団は、韓国調査団にこのような問題提起をしたが、聞き入れられなかったので帰国した。ロシア調査団が帰国した当時、私ととても親しくしている友人がモスクワにいて、調査団に「何故、報告書を公開しないのか」と尋ねたところ、彼らは「それを公開したらオバマ大統領と李明博大統領が困ると思ったので公開しなかった」と答えたという。天安艦問題はもう取り下げた方がよい。トンキン湾事件*を思い出す。

  *1964年8月、北ベトナムのトンキン湾で同国の哨戒艦がアメリカ海軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したとされる事件で、これをきっかけに米国はベトナムに本格介入し北爆を始める。のちに米軍が仕組んだことが暴露される。

  質問:報告書を公開するとオバマ大統領が困るとはどういう意味なのか。

  答 :一言で言って、当惑するだろう。米国のみならず、合同調査団のすべての国々が困ることになるだろう。一言で言って、誤った報告書に署名したことになるのだから。だから、私はこの問題を取り下げたらどうかと思っている。朝米対話が始められるためにも。

  ドナルド・グレッグ氏といえば、1951年に米中央情報部(CIA)員になって以来、サイパンで朝鮮からの亡命者をサイパンで訓練し投入する作戦に従事し、1968年には南朝鮮駐在の大使館員として朝鮮半島にはじめて足を踏み入れ、朴正煕・維新独裁政権時代の1973年にはCIA南朝鮮支部の総責任者として再び赴任した。1989年~93年に駐南朝鮮米国大使を歴任した。その後、平壌にも5回訪問している。まさに、米国を代表する「海千山千」の朝鮮問題専門家であるグレッグ氏の見解には重みがあるといえる。(了)

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