朝鮮国防委員会が「北南関係改善の活路を開いていくことに共に取り組もう」と題する公開書簡を南側に送った。
以下はその全文。
世紀と年代を越え続いている国土分裂の歴史は、わが民族に計り知れない災難と苦痛をもたらしている。
日が経つにつれ激化していく北南間の不信と対決によって増大する民族の莫大な犠牲と消耗は、何をもってしても補償することができない険悪な状況に陥っている。
祖国解放とともに始まったわが民族のこの悲劇的な恥辱の歴史は、すべて外勢によって強要されたものである。
しかし、祖国と民族の運命をその都度正すことができず、今日まで分裂の痛みを拭い去ることが出来なかったわが同胞すべての人々にもその責任がある。
とくに、思想と制度の差を絶対化して同胞と民族の願いに目をそむけたまま、対決だけを主導してきた当局者たちにはより大きな責任がある。
これ以上ただ手をこまねいていることはできないこの厳然たる現実を前に、国土両断と民族分裂の歴史に終止符を打とうという断固たる決心を固めたわが最高首脳部は、今年の新年の辞で祖国統一の新しい転機をもたらすための現実的な方法を内外に明らかにした。
これに応じて、去る1月16日、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会が南朝鮮当局に送った熱い呼び掛けがまさに、北南関係の活路を開くための重大提案である。
われわれの重大提案には、すべての不幸な過去を不問にし、互いの力を合わせて北南関係を改善しようとするわが軍隊と人民の不変の意志が反映されている。
この提案にはまた、祖国の自主的統一と平和繁栄を望むすべての同胞の志向と要求が込められている。
われわれが今日まで高度な忍耐力と雅量を持ち、重大提案に対する肯定的な呼応を期待して南朝鮮当局の動きを注視してきたのもまさにそのためである。
しかし、残念ながらわれわれの重大提案に対する南朝鮮当局の穏当でない態度と否定的な立場はいまだに旧態依然である。
これと関連し、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会は朝鮮労働党中央委員会第1書記、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会第1委員長、朝鮮人民軍最高司令官の特命により、南朝鮮当局と諸政党、社会団体、各界各層の人々に今一度この公開書簡を送る。
北南関係を改善するうえで何より重要なのは、この問題に対する正しい立場と姿勢を堅持することである。
北南関係を改善する問題は、民族の和解と団結を成し遂げるための先決条件であり、統一への近道を開くための出発点である。
したがって、民族の和解と団結を成し遂げるのに役立つのであれば、その人が誰であれ、どんな政見と信仰を持っていようと、つねに民族重視、民族優先の立場で誠心誠意を尽くして成就させなければならない。
このことから、われわれは重大提案に絶え間なく行われてきた南朝鮮当局のビラ散布はもちろん、北南合意を破って再開した対北心理戦放送についてもまったく言及しなかった。
ただ互いが相手を刺激し誹謗中傷する百害無益な行為の全面中止についてのみ提案したのである。
そうしたのには、過ぎたことをあれこれ言うことに執着すると、また新たな反目や嫉視、対決を生み出す悪循環が繰り返されるかもしれないとの思いからであった。
開きもせずに見る必要がないという風に良い本を投げ捨てたら、どうなるのか。
南朝鮮当局は、関係改善に関するわれわれの提案を深く読むこともせずむやみに相手に歯向かうべきではなく、南朝鮮のすべての政党と社会団体、各界各層の人々は、同胞たちの熱い呼び掛けに声を合わせるべきである。
われわれはすでに一方的に相手方への刺激や誹謗重傷を全面中止する道に入った。
関係改善の雰囲気を醸成してこそ、民族の団結と和合が成し遂げられ、そこにわが民族同士の力で自主的統一を早める真の道がある。
南北関係改善の活路を開くために重要なことはまた、不信と対決を生むもっとも大きな障害である軍事的敵対行為を全面的に中止する決断をくだすことだ。
南北関係を改善するには雰囲気の醸成も必要であるが、それをさえぎる基本的障害である軍事的敵対行為を根絶することが非常に重要である。
それは、戦争でも平和でもない不安定な情勢が戦争の瀬戸際まで至っている朝鮮半島の現状況において、大きくない偶発的な軍事的衝突も瞬く間に全面戦争へと拡大するかもしれないからである。
われわれの重大提案で明らかにされているように、この地で全面戦争が勃発すれば、漁夫の利を得るのはわれわれの統一を願わない勢力だけである。
その代わりわが民族は、人も、山河も、築いておいたすべての財産もみな失う災難だけを被ることになるだろう。
そこで提案したのが、互いが互いを刺激し威嚇する軍事的敵対行為の全面中止である。
われわれの重大提案は決して南朝鮮当局が騒いでいるような「偽装平和攻勢」でも、同族に対して行う「宣伝心理戦」でもなく、新しい「挑発」を前提とした口実を用意し国際社会の間違った世論を正すための「名分づくり」などではさらにない。
また、ありもせず、これからも起こり得ない「急変事態」や「体制の不安定」を収拾するために提案した政略的な措置ではなおさらにない。
われわれが関係改善の一環としてただちに中止することを提案した「キー・リゾルブ」、「フォール・イーグル」合同軍事演習について言うならば、それは徹頭徹尾「防御的」であり「毎年恒例」だという美名の下に繰り広げられる危険千万な北侵戦争演習である。
多分この演習に参加した侵略軍部隊に割り当てられた攻撃目標が朝鮮半島北半部の重要な対象であり、この演習体系の中で計画された大規模な連合上陸作戦が平壌占領を狙ったものであるという厳然たる一つの事実だけをもってしても、南朝鮮当局は何も言えなくなるだろう。
われわれは南朝鮮当局に一般的な軍事訓練を中止せよとの提案はしなかった。
われわれの主張は、外勢と結託して同族をターゲットにした侵略戦争演習を中止しろということだ。
その演習について、米国に対する期待がそれほど大きく、米国との「合同」や「協同」が捨てきれないほど大切でどうしてもしたいならば、わが国の領土や領海、領空から遠く離れた閑静な場所か、米国に行ってやれと言ったのである。
南朝鮮当局は、遅きに失した感はあるが、米国という存在がこの地に平和ではなく戦争をもたらす侵略者であり、民族が望む統一ではなく永久的な分裂と支配をもくろむ破廉恥な占領者、数千万のわが同胞に永遠に拭いさることができない悲痛な恨を残した不倶戴天の敵であるということをしっかりと知るべきだ。
崇米事大、供米屈従から抜け出せなければ、敵が誰かも見分けることができないことを二の次にしても、同族の真情も、温かく差し出したでした和解の手にも気付くことができなくなるものである。
われわれについて言うならば、関係改善の活路を開くために、今はもちろん今後も外勢を引き入れて民族の安全と平和保障を害する軍事的行動を起こすことはないだろう。
われわれはすでに、西海にある五つの島のホット・スポットを含んだ最前線の地上と海上、空中で相手方を刺激するすべての軍事的敵対行為まで全面中止にする実践的な措置を先に取ることにした。
南朝鮮当局はわれわれの真情を込めた重大提案をむやみに疑ったり誤解してはならず、軽率に拒否してはならない。
拒否すればするほど、北南関係改善を渇望するすべての同胞の強まる抵抗を防げなくなるだろう。
南朝鮮のすべての政党、社会団体と各界各層の人々は、侵略戦争演習をはじめとしたあらゆる軍事的敵対行為を全面的に中止することで北南関係改善の道を開こうというわれわれの正当な呼びかけに応じるべきである。
軍事的敵対行為という基本的な障害物を全面的に除去するとき、真の北南関係改善がなされ、まさにそこに民族的和解と団結を成し遂げ祖国の平和と安全を担保する基本的方途がある。
北南関係改善はまた、わが民族同士の団結した力でこの地にいつ押し寄せる恐れのある核の災難を防ぐための現実的な措置を共に取るとき、さらに確固たるものになろう。
朝鮮半島の当面の核の災難は、グアム島や沖縄、西部太平洋水域と米国本土から、何の制約も受けずに南朝鮮とその周辺地域にいつでもこぞって来ることのできる米国の地上、海上、空中の核攻撃手段によってもたらされるだろう。
われわれがこの問題を北南関係改善の重要な内容の一つとして提案した理由もまさにここにある。
朝鮮半島の非核化は、全同胞が力を合わせて実現しなければならない、民族共同の目標である。
南朝鮮当局はわれわれの非核化の意志について、いささかの疑いを持ってはならない。
朝鮮半島非核化の基本的な趣旨は、あくまでわが民族すべてに対する米国の核脅威と恐喝を終らせ、この地にいつ押しよせるかも知れない恐ろしい核の惨禍を未然に防ごうということにある。
したがって、われわれは南朝鮮当局に、これ以上米国の危険千万な核攻撃手段を朝鮮半島とその周辺地域に引き入れないよう丁重に提案した。
しかし南朝鮮当局はとんちんかんにも、朝鮮半島の核問題がわれわれの核実験などに端を発したかのように世論を惑わしながら、われわれの正正堂々とした提案を拒否する立場しかを表明しかった。
常に言葉は正直に言えといったものである。
あえて朝鮮半島の核問題について言うならば、それは20世紀の50年代末、南朝鮮への米国の核兵器搬入が発端となった。
そのとき米国は「否認も是認もしないことが米国の核政策」としながら、南朝鮮に約1,000発の核弾頭と運搬手段を秘密裏に搬入して随所に備蓄していた。
このように生じたのが朝鮮半島の核問題であり、これに対するわれわれの誠意ある努力と頑強な闘いによってもたらされたのが、他でもない朝鮮半島の非核化宣言である。
たとえ政権が変わり当局者が交替したとしても、南朝鮮当局は当然ながら自国で発生した核問題の根源についてだけはしっかりと知った上で言葉を発しなければならない。
今日の絡まった糸を解くためには、過去を正しく知り、正確な立場を表明する上では率直でなければならず、知りながらも事実を歪曲したり誤った立場と主張に固執することがあってはならない。
米国と共に南朝鮮当局が問題視するわれわれの核武力について言うならば、それはあくまでも米国による核の脅威と恐喝から祖国と民族を守るための民族共同の宝剣であり、決して同族を恐喝したり、害するためのものではない。
われわれの並進路線もまた、米国が強要しようとする核戦争の惨禍から祖国の平和と安全を守るためのもっとも賢明な自衛的選択であるということを今一度強調する。
南朝鮮当局はわれわれが保有した民族の大切な自衛的核武力についてあれこれ言う前に、外勢の核を引き入れて同族を害する危険千万な行為をまず自らやめる勇断をくだすべきである。
南朝鮮の諸政党と社会団体、各界各層の人々は、この地における核の災難は北からではなく米国から来るということをしっかりと知り、外勢の核攻撃手段を引き入れるいかなる些細な動きも絶対に許してはならない。
当面する核の災難を防ぐための現実的な措置を取ることが、北南関係改善のしっかりとした担保となり、祖国の平和と安全を守る道となる。
和解と団結の雰囲気をつくり出し、軍事的敵対行為を全面的に中止にすると同時に、離散家族の再会も実現し金剛山観光も再開し、様々な北南間の協力と交流を活発化させようというのがわれわれの決心である。
わが民族同士の団結した力で北南関係改善の活路を開こうとするわが軍隊と人民の立場は確固不動である。
北南関係改善がすなわち全同胞が願う自主的統一であり平和繁栄である。
われわれは、南朝鮮当局と諸政党、社会団体、各界各層の人民が、全同胞の志向と要求を反映したわれわれの重大提案の実現に、こぞって積極的に取り組むであろうとの期待を表明する。
朝鮮民主主義人民共和国国防委員会
2014年1月23日
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