10日、菅義偉官房長官が国家安全保障会議(NSC)で決定された、朝鮮民主主義人民共和国に対する「独自の制裁措置」を発表したことについて、本日、南昇祐副議長が記者会見を開き、在日本朝鮮人総聯合会中央常任委員会の声明を発表した。
(以下全文)
日本政府は10日、朝鮮民主主義人民共和国に対する日本独自の「制裁」を復活・強化する措置を決定し発表した。
今回の措置は、わが国の核実験と人工衛星打ち上げを口実に「北朝鮮脅威」を煽り、米・日・「韓」の三角軍事同盟を強化しながら、朝鮮を封じ込め圧殺しようとする悪辣な企図のもと、朝日関係に新たな人為的障害をもたらし、朝鮮総聯の活動と在日同胞の生活を不当に規制・抑圧する許しがたい暴挙である。
われわれは、わが国に対する敵意をむき出しにし、朝鮮総聯と在日同胞をターゲットにした、反共和国、反総聯の「制裁」措置をこみ上げる強い憤りをもって断固糾弾し、安倍政権に強く抗議する。
朝鮮民主主義人民共和国の政府声明が明らかにしたように、1月6日の水爆実験は、米国をはじめとする敵対勢力の日ましに増大する核の脅威から国の自主権と民族の生存権を守り、朝鮮半島の平和と地域の安全を保障するための自衛的措置である。
また、共和国の地球観測衛星「光明星4号」の打ち上げは、国際法にもとづき、すべての主権国家に認められた自主的権利であり、それがあくまで地球観測などの平和利用を目的としていることは、明々白々である。
にもかかわらず、日本政府が米国や南朝鮮当局と結託し、わが国に対する独自の「制裁」措置を決定したことは、朝鮮半島の緊張を一段と激化させる危険な行為である。
今回の措置は、日本側が「朝日平壌宣言に則って、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、国交正常化を実現する意思を改めて明らかにし、日朝間の信頼を醸成し関係改善を目指すため、誠実に臨む」と約束した2014年5月の朝・日ストックホルム合意を一方的に破棄する行為である。
ストックホルム合意にしたがって、朝鮮側が調査委員会を発足させ、拉致問題を含めすべての日本人に関する再調査を誠実に行い終えようとしている時期に、日本側が約束・解除した一部の制裁を復活させ、さらに強化するということは、誰が見ても明白な約束違反であり、ストックホルム合意の一方的破棄であるとしか言いようがない。
朝・日関係を再び最悪の状況に追いやる今回の措置によって、日本政府は今後生じるすべての事態に対する責任を厳しく問われることになるであろう。
今回の措置は、再入国禁止対象者の大幅な拡大、共和国への送金禁止、「万景峰-92」号をはじめとするすべての朝鮮籍船舶の入港禁止など、朝鮮総聯の公正な活動をより厳しく規制し、在日同胞の生活と権利を著しく踏みにじる極めて不当な内容を含んでいる。
特に看過できないのは、今回の措置で、以前再入国を禁止した「北朝鮮当局職員及びその活動を補佐する者」の「対象を従来より拡大する」としていることである。
これをもって、日本政府が恣意的にすべての朝鮮総聯関係者と在日同胞にその対象を際限なく広げようとしていることは、朝鮮総聯に対するあからさまな政治的弾圧、在日同胞の基本的人権を蹂躙する常軌を逸した反人道的行為である。
日本政府が、わが国の人工衛星打ち上げを「実質的な弾道ミサイル発射」と決めつけ、それがあたかも日本列島にむけて飛んでくるかのごとく日本国民に誤解と恐怖心を煽り、日本社会にわが国と朝鮮総聯、在日同胞に対する敵意と排他意識をより一層助長させていることに怒りを禁じえない。
日本が打ち上げるH2Aロケットやスパイ衛星は人工衛星であって、わが国が打ち上げる人工衛星は「ミサイル」だと強弁することは、「鹿をさして馬となす」(指鹿為馬)に等しい詭弁であり、米国とともに、わが国に対する軍事的挑発をもくろむものである。
日本政府の対朝鮮「制裁」措置が実施されてきたこの10年間、政治的抑圧と民族的差別、ヘイトスピーチなど排他的風潮の中で、在日同胞とくに子供たちまで深刻な脅威にさらされてきたことは許しがたいことである。
今回の「制裁」で、在日同胞の再入国を大幅に規制することによって、1959年以降に帰国した祖国に住む高齢化した親や兄弟に会う機会を奪うことは、非人間的かつ非人道的行為だと断じざるを得ない。
日本が、敗戦後70年の今日に至るまで、植民地支配の犠牲者である在日同胞とその子孫に対し過去を償うどころか、差別・抑圧し続けていることは、世界に類を見ない「人道に反する罪」であり、国際法や戦後の国際常識からしても到底許されることではない。
今回の日本独自の「制裁」措置は、朝鮮半島と東北アジアの平和と朝・日善隣友好関係を求める両国民と国際世論に対する無謀な挑発であり、すべての在日同胞と心ある日本国民の非難を招き、朝日関係にも取り返しのつかない重大な禍根を残すであろう。
「圧力」と「制裁」は、対立と緊張激化の悪循環を生み、不信と憎悪を増幅させるだけで、何の問題解決にもならないということは、「制裁」実施後の歳月が如実に証明している。
われわれは、日本政府が朝鮮に対する不当な「制裁」を直ちに撤回することを強く要求する。
(了)
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