国連の人種差別撤廃委員会は、8月16日~17に日本政府の報告書に対する4年ぶりの審査を行うが、そこでは「朝鮮学校及び朝鮮学校生徒の教育権の保障に対する日本政府の措置」が主題の一つとして取り上げられることになっている。
この日本審査に際し、「民主社会のための弁護士の会」(民弁)、「朝鮮学校と共にある人々・チビ太鉛筆」、「民族問題研究所」など、有力な43の南朝鮮の市民団体と海外の同胞市民団体が連名で「日本政府による朝鮮学校及び朝鮮学校学生に対する差別と人権侵害の実態に関する報告書」を同委員会に提出した。
これに関し自民党政調会長代理の参議院議員・片山さつき氏は、夕刊フジの7月30日付のインターネット版の記事で、高校無償化制度からの除外など、日本政府による朝鮮学校に対する差別的措置や6月28日に起きた神戸朝鮮高校生に対する関西空港の税関当局による人権侵害行為を正当化する妄言を吐いた。
片山氏は「『朝鮮学校だからダメだ』というわけではない。
補助金などを得ようとするなら、北朝鮮との不当な関係を払拭した証拠が必要だ」と述べたが、朝鮮学校生徒を含む在日朝鮮人と祖国・朝鮮との絆は、本国と海外在住民との自然で普遍的な関係であり、そこに「不当な関係」などありえない。
片山氏は、日本政府が敵視する朝鮮民主主義人民共和国と関係を持つこと自体が「不当」で、「関係を断ち切れ」と言いたいのかもしれないが、それは太平洋戦争時に日系移民を強制収容所に送り込んだ当時の米国政府の発想と重なる。
ましてや、在日朝鮮人は、単なる移民ではなく、日本の過去の植民地支配の犠牲者である。
朝日間の敵対関係を口実に、その子弟まで差別する卑劣な不当行為を正当化する片山氏の発言は、到底許すことのできない暴言である。
国連人種差別撤廃条約をはじめ国際人権法は、すべての子供たちに学ぶ権利を保障し、とくに外国人の子供たちが自国の言語や歴史、文化を学ぶ権利を保障しているが、この権利を日本の外国人学校の中で朝鮮学校の生徒たちだけが、日本政府によって侵害されている。
これは、隠しようのない事実である。
ゆえに、国連人種差別撤廃委員会だけでなくあらゆる国連人権委員会が、日本政府に対し、朝鮮学校に対する高校無償化排除や補助金支給停止を差別であると明言し、是正勧告を繰り返し出してきたのである。
この差別が是正されない限り、8月に開かれる人種差別撤廃委員会の日本審査において、差別是正勧告が出されるのは必至である。
片山氏はこの厳然たる事実を知らないのだろうか。
いや、知っているからこそ「国連は決して中立的な場ではない」と断言し、「日本は国連の分担金の見直しも考慮に入れつつ発言力を増強するためにさらにコミットしていくべきだ」ということまで述べたのであろう。
お金の力で国連さえも動かせるという妄想にかられた傲慢で愚かな発言である。
6月 28日に関西国際空港の税関当局が、朝鮮に修学旅行に行った神戸朝鮮高校生たちの持ち帰った祖国の親族からのお土産や記念品、親兄弟や友人にプレゼントしようと買った民芸品、ひいては法令や通達で認められている使用中や使用した携帯品まで没収するという人権侵害と違法行為を働き、子供たちの純粋な心を深く傷つけたことについても、片山氏は「日本は粛々と法を執行しているだけで、格別の意図は入っていない。
これは明らかに差別ではない」と言い放ち正当化した。
彼女に温かい人間の血がかよっているなら、こんなことは言えなかっただろう。
政治家としての良識はもとより、人間としての人権感覚を疑う。
片山氏に少しでも良心があるなら、これらの妄言を撤回し、朝鮮学校の生徒たちに謝罪すべきであろう。
(了)
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