[埼玉弁護士会] 各種学校の幼児教育・保育施設を「幼保無償化」制度の対象にすること等を求める会長声明(2月12日)
声明の趣旨
日本政府に対し,各種学校の幼児教育・保育施設に対して改正された子ども・子育て支援法に基づく無償化制度を適用することを求める。
地方自治体に対し,国が各種学校の幼児教育・保育施設に対して上記無償化制度を適用するまでの間,当該施設又は当該施設に入所している幼児の保護者に対し,上記無償化措置と同等の支援を行うことを求める。
声明の理由
1 2019(令和元)年10月1日,改正子ども・子育て支援法(以下「法」という。)に基づき,幼稚園,保育所,認定子ども園等の利用料を無償とする制度(以下「無償化制度」という。)が開始された。
無償化制度の対象には,幼稚園の預かり保育を始め,認可外保育施設,一時預かり事業(ベビーシッター,ベビーホテル等も含む)等,様々な形態の施設及び事業が含まれている。
しかしながら,各種学校(学校教育法134条)が運営する幼児教育・保育施設は,無償化制度の対象から除外されている(以下,無償化制度の対象から除外されている施設を「対象外施設」という。)。
その理由は,日本政府によると「幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく,多種多様な教育を行って」いるから(関係閣僚合意「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」2018.12.28)とのことである。
2 そもそも,無償化制度の理念は,「全ての子どもが健やかに成長するように支援するものであって、良質かつ適切なものであり、かつ、子どもの保護者の経済的負担の軽減について適切に配慮されたものでなければならない」(法2条)というものである。
この点に照らせば,「多種多様な教育を行って」いるとの理由で各種学校の幼児教育施設を除外することは,法の趣旨に沿わず,憲法14条,並びに差別的取り扱いを禁止した社会権規約2条2項,自由権規約2条1項,子どもの権利条約2条1項及び人種差別撤廃条約2条1項等の人権諸条約に反する。
3 無償化制度制定過程における国会議論からも明らかなとおり,無償化制度の財源は,これと同じ日に開始した消費増税による税収が充てられているところ,無償化制度から除外された当事者は,税負担の増加に見合った恩恵を受けることができていないという極めて不公平な状態に置かれている。
4 このような状態が一刻も早く是正されるために,当会は,日本政府に対し,各種学校の幼児教育・保育施設に対し一刻も早く法改正を行って無償化制度を適用することを求める。
また,地方自治体に対しては,住民間に生じている不平等を看過せず,速やかに,政府が無償化制度を適用するまでの間対象外施設又は当該施設に入所している幼児の保護者に対し,救済措置として無償化措置と同等の支援を行うことを求める。
令和2年2月12日
埼玉弁護士会会長 吉澤俊一
[大阪弁護士会] 「幼保無償化」から外国人学校の幼児教育・保育施設を除外しないことを求める会長声明(2月13日)
子ども・子育て支援法改正法が、2019年(令和元年)10月1日から施行され、幼児教育・保育の無償化(以下「幼保無償化」という。が始まった。
認可幼稚園、認可保育園、認定こども園のほか、認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業も幼保無償化の対象とされた(子ども・子育て支援法第7条10項、第30条の2以下等)。
ところが、政府は、ブラジル人学校や朝鮮学校等、各種学校である外国人学校の幼児教育・保育施設(以下「外国人学校幼保施設」という。
)は「幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、多種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象とはならない。
」とした(「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」2018年12月28日関係閣僚合意。以下「閣僚合意」という。)。
外国人学校幼保施設の中には、元々、認可外保育施設として届け出ていた施設や、幼保無償化施行に向けて新たに認可外保育施設としての届出を行おうとした外国人学校幼保施設もあった。
しかるに、閣僚合意に基づく厚労省の指導(子発0405第2号2019年4月5日厚生労働省子ども家庭局長「児童福祉法施行規則の一部を改正する省令の公布交付について」)により、地方自治体は、外国人学校幼保施設の認可外保育施設としての届出を受け付けず、更には、認可外保育施設として届け出ていた外国人学校幼保施設に認可外の廃止届を求めた。
しかしながら、幼保無償化の対象となるのは、認可外保育施設の届出をした施設のうち、内閣府令で定める基準を満たす施設であるところ、同府令に定める保育の内容は、「①小学校就学前子ども一人一人の心身の発育や発達の状況を把握し、保育内容が工夫されていること、②小学校就学前子どもが安全で清潔な環境の中で、遊び、運動、睡眠等がバランスよく組みあわされた健康的な生活リズムが保たれるように、十分に配慮がなされた保育の計画が定められていること」等であり、「幼児教育を含む個別の教育に関する基準」による保育が要求されているわけではない(子ども・子育て支援法第7条10項4号、平成26年内閣府令第44号子ども・子育て支援法施行規則第1条1号二)。
子ども・子育て支援法は、「すべての子どもが健やかに成長すること」(法第2条2項)を基本理念とするものであるにもかかわらず、認可外保育施設の届出を受け付けなかったり廃止届出を求めるなどすることは、実質的な外国人差別を助長するものであって、憲法第14条、自由権規約第2条1項、社会権規約第2条2項、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約第2条1項などが禁止する差別的取扱いに該当する。
したがって、当会は、国及び地方自治体に対し、幼保無償化の対象から外国人学校幼保施設を除外しないことを求める。
2020年 (令和2年) 2月13日
大阪弁護士会 会長 今川 忠
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